ムコ多糖症Ⅱ型について
ムコ多糖症Ⅱ型ってどんな病気なの?教えてムコタ先⽣!
ムコ多糖症は、体内のムコ多糖が分解されなくなって起こる病気なんじゃよ。
ムコ多糖症はライソゾーム病の一つです
ムコ多糖*(グリコサミノグリカン:GAG)は、皮膚や骨、軟骨、靭帯などの組織に多く存在し、細胞内のライソゾームの中で10種類以上の酵素によって分解されます。ムコ多糖症は遺伝的な原因によってムコ多糖を分解するライソゾーム内の酵素がつくられなかったり(酵素の欠損)、弱かったりすることによって、ムコ多糖が全身の細胞の中にたまってしまい、さまざまな臓器に障害が生じる病気です(先天性代謝異常症)。分解されずにたまってしまうムコ多糖にはデルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸などがあります。
*ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などの多糖類の総称です。
ムコ多糖症の発症メカニズム

ムコ多糖症は、7つの病型に分類されます
ムコ多糖症は、欠けている、または働きが弱い酵素の種類や、たまってしまうムコ多糖の種類によって、I型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、VI型、Ⅶ型、Ⅸ型*の7つの病型に分類されます。病型によって症状も異なります。
*ムコ多糖症Ⅸ型については海外で報告されていますが、日本国内では報告されていません。また、Ⅴ型とⅧ型は欠番になっています。
ムコ多糖症の分類
疾患名 | 別名 | 欠損している、 または働きの弱い酵素 | たまる ムコ多糖 |
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ムコ多糖症Ⅰ型 | ハーラー症候群 (重症型) |
α-L-イズロニダーゼ | デルマタン硫酸 ヘパラン硫酸 |
シャイエ症候群 (軽症型) |
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ハーラー・シャイエ症候群 (中間型) |
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ムコ多糖症Ⅱ型 | ハンター症候群 | イズロン酸-2-スルファターゼ | デルマタン硫酸 ヘパラン硫酸 |
ムコ多糖症Ⅲ型 | サンフィリッポ症候群 A型、B型、C型、D型 |
ヘパランN-スルファターゼなど、4つの型で酵素が異なります。 | ヘパラン硫酸 |
ムコ多糖症Ⅳ型 | モルキオ症候群A | N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ | コンドロイチン硫酸 ケラタン硫酸 |
モルキオ症候群B | β-ガラクトシダーゼ | ||
ムコ多糖症Ⅵ型 | マロトー・ラミー症候群 | N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ(アリルスルファターゼB) | デルマタン硫酸 コンドロイチン硫酸 |
ムコ多糖症Ⅶ型 | スライ症候群 | β-グルクロニダーゼ | デルマタン硫酸 ヘパラン硫酸 コンドロイチン硫酸 |
最も多くみられるムコ多糖症Ⅱ型(別名:ハンター症候群)
ムコ多糖症の中で、最も患者さんが多いのがムコ多糖症Ⅱ型で、半数以上を占めます。ムコ多糖症Ⅱ型は、特定の酵素(イズロン酸-2-スルファターゼ)をつくる遺伝子が変化してしまい、酵素がつくられなくなったり、働きが弱くなるために、ライソゾーム内にヘパラン硫酸やデルマタン硫酸といったムコ多糖が徐々にたまっていくことで発症します。ムコ多糖症の遺伝子の変化は、ムコ多糖症Ⅱ型とそれ以外の型で異なります。ムコ多糖症Ⅱ型は、性別を決めるX染色体が関与し男子に発症しますが(X連鎖性遺伝)、それ以外の型は常染色体が関与しています(常染色体潜性遺伝)。
国内におけるムコ多糖症の病型別頻度(岐阜大学の調査)
出生数から計算した国内におけるムコ多糖症全体の発症頻度は出生5.9万人に1人程度と推定されています(1982~2009年の期間に岐阜大学でムコ多糖症と診断された467例に基づく推定)。

全身にさまざまな症状が現れます
ムコ多糖症Ⅱ型の主な症状
ムコ多糖症Ⅱ型は国内で200名以上の患者さんが報告されていますが、同じムコ多糖症Ⅱ型でも現れる症状、現れる時期、病気の進行の仕方は一人ひとり異なります。病型は、症状の程度と症状が現れる時期から重症型と軽症型、その中間型の3つのタイプに分けられ、約70%が重症型といわれています。


重症型:
生後まもなくからヘルニアや肝臓・脾臓の腫大がみられ、乳児期から言葉の発達の遅れなどが現れます。成長とともに症状が進行し、神経や呼吸器などに重い症状が現れます。

軽症型:
知的な発達の遅れは無いか、あっても軽度。幼児期に関節拘縮*や中耳炎などが初発の症状として多く見られ、徐々に進行します。
*関節が固くなって、思うように動かせない状態

中間型:
重症型と軽症型の中間的なタイプで、いろいろな症状がみられます。
成長と症状の変化

乳児期
からだ全体に広がる蒙古斑や繰り返す中耳炎などが多くみられます。ヘルニア(脱腸やでべそ)がみられますが、ムコ多糖症と診断される前に手術されていることが多くあります。
幼児期
特徴的な顔つき(大きな頭、ムクムクした顔つき、まゆ毛が太い・濃いなど)、関節拘縮、難聴、お腹のはれなどがみられます。
学童~思春期
幼児期に現れた症状の進行がみられます。身長の伸びが鈍くなり、呼吸障害や嚥下障害などの症状もみられます。軽症型では知的発達は正常とされていますが、重症型では精神運動発達の遅れがみられます。
成人期
軽症型であっても、弁膜症による心不全、気道狭窄による呼吸不全、難聴、関節拘縮などが進行して日常生活が制限され学業・就労が困難な場合もみられます。