ムコ多糖症Ⅱ型の治療⽅法

どんな治療をするの?教えてムコタ先生!

たまったムコ多糖を減らす治療を行うんじゃよ。

酵素補充療法を中心とした治療が行われます

ムコ多糖症Ⅱ型の治療には、たまっているムコ多糖を分解して症状の改善をはかる酵素補充療法や造血幹細胞移植などがあります。また、さまざまな症状に対する対症療法があります。

ムコ多糖症Ⅱ型の治療の実際

酵素補充療法

欠損あるいは不足している酵素(イズロン酸-2-スルファターゼ)を体外から点滴などで補充する治療法です。体外から投与された酵素が細胞の中に運ばれて、たまっているムコ多糖を分解することによって症状を改善し、病気の進行を抑えることが期待されます。一方で静脈内投与では中枢神経症状には効果が出にくく、中枢神経症状の治療のために、脳内に直接投与する脳室内酵素製剤や、血液脳関門を通過することのできる技術を用いた静脈内投与の薬剤などが承認されています。酵素補充療法の開始のタイミングは、可能な限り早期に開始することが推奨されています。現在国内では、ムコ多糖症Ⅰ型、Ⅱ型、ⅣA型、Ⅵ型の4つの病型に酵素補充療法を行うことができます(2022年10月現在)。

酵素製剤の脳室内投与

これまでの酵素製剤の静脈内投与では、高分子のたんぱく質である酵素製剤が中枢神経に届くことができず、中枢神経症状の治療の効果が不十分でした。そのため、運動や言葉の遅れなどのムコ多糖症Ⅱ型の中枢神経症状に対して効果がみられる治療法が望まれてきました。近年、脳室内に直接投与する酵素製剤が開発され、ムコ多糖症Ⅱ型に対する新しい治療として選択できるようになりました。臨床試験では、より早い時期に治療を開始することで、発達の遅れを抑制することが期待されています。

なぜ、静脈内投与では酵素製剤が中枢神経に届かないの?

脳の入り口には血液脳関門と呼ばれるバリアが存在し、血液中の分子量の大きい薬剤などは脳に移行することができません。点滴静注された酵素製剤は分子量が大きいため、血液脳関門を通過することができず、脳内の神経細胞に到達できません。

脳以外の臓器では、薬物は毛細血管から組織間液に移行します。

造血幹細胞移植

正常な造血幹細胞をドナー(提供者)から患者さんに移植して、不足している酵素を体の中でつくることができるようにする治療です。移植によって患者さんの体内に定着した造血幹細胞は、正常に働くライソゾームの酵素をもつ血液細胞をつくることができます。この酵素がたまっているムコ多糖を分解し、症状を改善します。適応は患者さんの症状や重症度などに応じて慎重に判断されます。

対症療法

ムコ多糖症Ⅱ型では全身にさまざまな症状が現れるため、それぞれの症状に応じたお薬の内服や処置などの治療が行われます。そのため、耳鼻咽喉科や整形外科など他の診療科とも連携して治療が行われます。


例えば…

耳・のどの症状

鼓膜に換気のためのチューブを挿入して、中耳に滲出物がたまらないようにすることで、中耳炎を起こす回数が減り、聴力も改善することが期待できます。難聴になった場合には補聴器を使用します。また、扁桃肥大は肥大している扁桃を手術で取り除きます。

関節の症状

関節の機能や運動能力を維持するため、運動訓練などの理学療法(リハビリテーション)を行います。

心臓の症状

進行に応じてお薬で治療しますが、定期的にエコー検査などで心臓弁膜の異常をチェックします。重症の場合は、動きの悪くなった弁を人工弁に取り換える手術を行うこともあります。

呼吸器の症状

気道が狭くなって呼吸困難がみられる場合には、マスク型の持続陽圧呼吸補助装置(Cーパップ)の使用や、場合によっては気管切開術などを行うことがあります。

早期の診断と早期からの治療開始が重要です

ムコ多糖症Ⅱ型はさまざまな症状がみられ、一人ひとり症状の現れ方も異なります。また、ほかの病気でもみられる症状が多く、診断が難しいと言われています。しかし、何もしないでいると症状が進行してしまう病気であることから、特徴的な症状を見逃さず、できるだけ早く専門医の診断・治療を受けることが大切です。より早くから治療を開始することで、症状の進行を遅らせることが期待できます。

治療を乗り越えるために知っておきたいこと

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