新生児マススクリーニングで陽性と言われたあなたへ:不安と向き合うご家族へのメッセージ

国立成育医療研究センター 看護部 専門看護室 副看護師長/遺伝診療センター 遺伝看護専門看護師

津島 智子 様

今回のみんなの声は、新生児マススクリーニングで陽性と告げられ、不安な気持ちを抱えられているご家族に向けてのメッセージを国立成育医療研究センター 遺伝看護専門看護師の津島 智子様にうかがいました。

新生児マススクリーニングについて教えてください

新生児マススクリーニングは、症状が出る前に病気をみつけて治療を始めることを目的とした検査です。※1
スクリーニングは、見逃しを防ぐために、正常と異常の境目を幅広く“陽性”と判定するようになってしまうことがあります。陽性と判定されても、“病気が確定した”という意味ではありません。精密検査を受けた結果、最終的に“異常なし”となることもあります。必要に応じて、より詳しい特殊検査や遺伝学的検査を行いますが、これらは結果が出るまでにどうしても時間がかかります。※2 スクリーニングで“陽性”と通知されてから最終的な結果が分かるまでの期間は、ご両親にとって最も不安の大きい時間だと思います。検査結果そのものを早めることは難しいのですが、その時間をどのように支えるかがとても大切だと感じています。

※1 遺伝診療センター「市民公開フォーラム2025」開催報告(前編) | 国立成育医療研究センター
※2 マススクリーニング研究室 | 国立成育医療研究センター

精密検査が必要と告げられたご家族にどのように寄り添われていますか

不安でいっぱいの状態で電話をかけてこられる方が多くおられます。中には、泣きながら「どうしたらいいですか」とお話しされる方もいらっしゃいます。「とにかく早く受診したい」「明日でも行けますか」という声もよく聞きます。そういった気持ちをちゃんと受け止めて、「担当の先生と相談して、できるだけ早く予約を取りますからね」と、なるべく安心してもらえるように伝えています。状況に応じて、医療機関同士で直接連絡を取り合って予約を調整することもあります。
親御さんからよく聞くのが、「産科の先生が”分からない病気”って言うのはどういうことなのですか?」という言葉。本当は先生が率直に “専門外なので詳しくは分からない” と伝えているだけなんですけど…その “分からない” が、親御さんにとっては 「そんな珍しい病気なの?」「うちの子は大丈夫なの?」 と、さらなるショックにつながってしまうことがあります。だからこそ、私はまず 「驚かれましたよね」 と気持ちに寄り添うことを大切にしています。その上で、 「早く専門の先生に診ていただきましょうね」 と一緒に進む形でお話しします。
場合によっては、専門の先生にも無理をお願いして、予約枠がいっぱいでも受け入れていただくこともあります。先生方も、不安なご家族のお気持ちを理解して協力してくださっています。

病院に来られた方ご家族がよく誤解されていることはありますか

インターネットで病気のことを調べていらっしゃることが多いですが、インターネットに載っているのは、たいてい重い症状です。例えば、重症型では小児期より進行性の神経学的障害を呈し、10歳前後から亡くなる例がみられるようになる”※3という心理的に負担の大きな情報が出てきます。
そうすると、“うちの子もそうなるの?” と不安と恐怖だけが大きくなってしまいます。実際には 病気ではない可能性もあるし、病気でも軽症の場合があります。また、 「もし病気だったとしても治療法があります」とお伝えしています。治療の選択肢があることを知るだけで、親御さんの表情は変わります。

※3 Jones SA, Almássy Z, Beck M, Burt K, Clarke JT, Giugliani R, Hendriksz C, Kroepfl T, Lavery L, Lin SP, Malm G, Ramaswami U, Tincheva R, Wraith JE; HOS Investigators. Mortality and cause of death in mucopolysaccharidosis type II. -a historical review based on data from the Hunter Outcome Survey (HOS). J Inherit Metab Dis. 32:534-543, 2009.

陽性と聞くとすぐに病気だと思ってしまう親御さんも多いですよね

そうですね。でも実は、スクリーニングで陽性となっても、その多くが“偽陽性”であり、病気ではありません。
実際、スクリーニングで陽性になった子の多くは、精密検査で“異常なし”と判定されます。※4
ですので、状況にもよりますが、「ほとんどは病気じゃないですよ」と伝えていらっしゃる先生もいます。そして、「たとえ病気だったとしても、早く見つかれば治療ができます」と。もし病気なら早期に治療が開始できますし、病気じゃなければ安心できます。
いずれの場合も、スクリーニングを受けたこと自体が有益なのです。

※4 Onuki T, et al. Japanese experience of newborn screening for lysosomal storage diseases and adrenoleukodystrophy.Orphanet Journal of Rare Diseases. 2025;20:373.

“偽陽性”についてどのように説明されていますか

最終的に病気でなかった場合に、「なぜ陽性と出たのですか?」 と聞かれることが多いですが、いくつか理由があります。
多くの場合は、“酵素の働きが低い体質”だからです。ですが、“酵素の働きが低い体質”なだけであって、病気ではない人って、知る機会がないだけで一定の割合でいらっしゃいます。※5 今回はたまたまその“酵素の働きが低い体質”であると新生児スクリーニングで分かっただけです。
そしてそれは体質であって、病気ではないんですね。“酵素の働きが低い体質”だから”将来体が弱くなる”“感染症にかかりやすくなる”というのは医学的に関連が低いとされています。

※5 遺伝診療センター「市民公開フォーラム2025」開催報告(前編) | 国立成育医療研究センタ

津島様がご家族と接する中で心掛けておられることはありますか。

診察室では緊張して話せないお母さんもいらっしゃいます。先生たちはどうしても“診療と正しい情報を伝える”ことが中心になるので、採血室に向かう際や別の場所でゆっくりお話しすることもあります。「育児をよく頑張っていますね」「気になること、わからなかったことはありますか?」と、気持ちに寄り添うようにしています。
小さい赤ちゃんが採血を受けるというだけで胸が締め付けられますし、赤ちゃんがワーッと泣いたら、お母さんも一緒に泣きそうになる。その心配な気持ちを少しでも和らげられるように、必要な検査であることを説明しつつ、そばでしっかり支えるようにしています。
「この3日間、眠れなくて…」と、お父さんも限界な心情で来られることもあります。「先生の話を聞けて安心したので、今晩は眠れそうです」とおっしゃる方もいます。「今日は美味しいものを食べて、ゆっくり休んでくださいね」と声をかけると、「涙が出そうになります」と言われることもあります。
それだけみなさん赤ちゃんに一生懸命です。病院に赤ちゃんを連れてくるだけでも大変な時期ですから、ご両親が赤ちゃんに愛情を注げる状態を守ることを心がけています。

今まさに不安な状態で結果を待たれているご家族へ、メッセージをお願いします

お子さんの誕生という大きな出来事を終えて、本来なら幸せな“お祝いムード”に包まれている時期ですよね。そんな時に届いた「再検査・精密検査が必要」という通知。「どうしてうちの子が?」「もし重い病気だったら……」と、頭の中が真っ白になってしまうのは、親として当然の反応です。
でもまずお伝えしたいのは、“もし病気だったとしても、早く見つかることで早く治療に進める”ということです。先天代謝異常症は早期からの治療開始が重要と言われていますので、早く見つかることはお子さんにとって一番良いことです。偽陽性で最終的に“病気ではありませんでした”となれば、それはそれで良い結果です。
ただ、その過程でご家族が大きな不安を抱えてしまうことは、今の検査精度の課題でもあります。そのため、検査方法の改善が日々検討されているところです。
また、各地域に専門の病院がありますので、一人で抱え込まず是非相談されてみてください。国立成育医療研究センターでも、産科・小児科、そしてご両親と三者が連携し、少しでもご家族が安心して検査結果を待てるよう引き続き心掛けていきたいと思います。

津島 智子 様

2013年 聖路加看護大学大学院 看護学研究科 助産学上級実践コース 修了2013年 国立成育医療研究センター 入職
助産師として周産期病棟、不妊診療科、移植外科、総合診療部の病棟で勤務
2017年 遺伝コーディネーター 併任
2021年 副看護師長に就任
2025年 遺伝看護専門看護師 現在に至る