脳外科医が語る リザーバ留置術のポイントと工夫

今回のみんなの声は、「リザーバ留置術」について北海道大学大学院医学研究科 脳神経外科の川堀 真人先生にうかがいました
リザーバ留置術は、脳外科医の先生にとって、どのような手術になりますか
脳外科では、様々な手術を行っています。その中で、リザーバ留置術は脳外科医において、標準的に行われている、確立された手術手技の一つといえるかと思います。リザーバ留置術は、脳室にチューブを入れる手術ですが、この手技は、水頭症に対するシャント手術やくも膜下出血などで行う脳室ドレナージでも用いられる基本的な手技になります。私自身も、これまで同様の手術を多数経験してきました。
ムコ多糖症Ⅱ型の患者さんに対するリザーバ留置術と、
他の疾患のリザーバ留置術との違いはありますか
ムコ多糖症Ⅱ型の乳児では、脳室が狭いことがあり、チューブを正確な位置に留置するには、他の疾患のリザーバ留置術より慎重な操作が必要になります。そのため、北海道大学では、大泉門が開いている乳児に対しては、前大泉門からの超音波とナビゲーションシステムを併用しています。
ナビゲーションで安全な穿刺経路を確認しながら、超音波でチューブの先端をリアルタイムに確認することで、より正確に留置できるよう工夫をしています。
乳児期にリザーバを留置した場合、成長に伴い脳が大きくなり、
脳室からチューブが抜けてしまうことはありますか
その点はあらかじめ考慮して手術を行っています。
手術前にお子さんの頭が今後どの程度成長するかを見据えたうえで、チューブの長さを調整して留置しています。
成長しても先端が脳室から抜けないよう、数センチほど余裕を持たせて留置しているので、これまで私の経験では、成長によってチューブが脳室から抜けてしまったケースはありません。
感染を起こさないために、オペや術後管理で工夫されていることはありますか
特筆すべきことはありませんが、傷口が血液や汗で長時間汚れた状態にならない様に伝えています。
翌日から傷を洗う事を心配される方もいらっしゃいますが、きれいに洗ってもらった方が良いと考えています。
入院中は看護師が翌日から傷口を洗って清潔に保つよう管理しています。
必要に応じて、抗生物質を使うことはありますが、傷口を清潔に保つことが感染予防のため重要と考えています。
万が一感染が起きた場合、どのような治療や対応が必要になりますか
万が一、リザーバに感染が起きた場合は、感染の程度や状態に応じて、リザーバやチューブの抜去、抗菌薬による治療などが必要になります。
多くの場合、適切な治療によって感染は改善します。感染が十分に落ち着いたことを確認したうえで、治療継続のために再度リザーバを留置することがあります。
リザーバ留置後、日常生活で制限されることはありますか
リザーバを留置したからといって、日常生活に大きな制限が生じることはありません。
留置部位に直接強い衝撃や刺激を与えないよう注意していただければ、それ以外は普段通り生活していただいて問題ありません。
リザーバ留置術へ不安を抱えている患者様やご家族へのメッセージをお願いいたします
リザーバ留置術は、脳室内投与を行うために必要となる手術です。
リザーバ留置術について知っておくべきだけではなく、脳室内治療がどのような目的で行われ、どのような効果が期待されるのかについても、併せて理解することが大切だと思います。ご家族には、脳室内治療によって期待される効果やリスク、またリザーバ留置術について必要な説明を十分に受けたうえで、主治医や脳神経外科医と相談しながら、お子さんにとってよりよい治療方針を検討していただきたいと思っています。
川堀 真人先生
2003年3月 北海道大学医学部卒業
2011年11月 カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)博士研究員
2012年3月 北海道大学大学院卒業(医学博士)
2018年4月 北海道大学病院 脳神経外科 特任講師
2019年4月 北海道大学病院 神経細胞治療研究部門 特任准教授
2019年8月 株式会社RAINBOW設立(取締役)
2023年4月 北海道大学大学院医学研究院 脳神経外科 講師(現職)
