ムコ多糖症の診断に至った経緯と患者様ご家族へ伝えたいこと

M.N.さん

今回のみんなの声は、お子様にムコ多糖症Ⅱ型のご兄弟がいらっしゃるM.N.さんに、
治療に至った経緯や同じ病気のお子様をもつご家族へのメッセージをお伺いしました。

お子様がムコ多糖症Ⅱ型の診断に至った経緯を教えてください。

長男は3歳7ヶ月でムコ多糖症Ⅱ型と診断されたのですが、振り返ってみると、おかしいなと思う症状はたくさんありました。お腹や頭が大きかったり、ものもらいが頻繁に起きていたり、身長を測るときに膝が固くて足を伸ばせない、言葉が少し遅いなどがありました。病院に何度か行っても“まあ、大丈夫でしょう” “おなかが張っているだけじゃないか”ということで、原因は分かりませんでした。2歳になるころには、鼠径ヘルニアと臍ヘルニアの手術をし、鼓膜チューブの挿入も行いました。なんでこんな小さいころから手術ばかりしないといけないのだろうと思っていましたが、原因は分からないままでした。
長男が3歳半の時、渡英することになったのですが、移動の飛行機の中で耳垂れが起こってしまい、イギリスに着いてすぐ、鼓膜チューブを交換するための手術を行いました。イギリスでは初診の際、出生時からの病歴を細かく聞かれるのですが、長男の病歴を聞いた耳鼻科の先生に“念のため小児科も受診しましょう”と言われ小児科も受診しました。小児科の先生にも、“念のため顔や手の写真を撮らせてほしい”と言われ、写真を撮ってその日は帰宅しました。今思えば、先生たちはその時既にムコ多糖症に気付いていたのだと思います。
次の日“遺伝科”から、すぐ病院に来るよう連絡がありました。でも、イギリスでは色々な診療科をたらい回しにされると聞いたことがあったので、きっとそれだろうと思い1ヶ月ほど放置してしまいました。
ある日、主人がネットで“子供の難病”という記事を見つけ、何気なくクリックしてみると、長男とそっくりな顔の男の子の写真が載っていて、記載されている症状もほぼ当てはまり、ぞっとしました。“遺伝科”から連絡が来ていたことともつながり、すぐに病院へ行きました。
まだ何の検査もしていなかったのですが、遺伝科のとびらを開けた瞬間、ムコ多糖症であろうと言われました。見る人が見たらすぐにわかったのだと思います。
まだ次男は1歳になる前で症状が現れていなかったため、大丈夫かもしれないと言われましたが、ムコ多糖症が遺伝病のため2人とも念のため検査をすることになりました。その結果、2人ともムコ多糖症Ⅱ型であることが分かりました。

ムコ多糖症Ⅱ型と伝えられたとき、どのような気持ちでしたか?

検査結果が分かるまで1ヶ月ほどかかったのですが、その期間は、どうか何もありませんように、間違いであってほしいと願いながら、色々な情報を調べたりしていました。
しかし結局2人ともムコ多糖症Ⅱ型だと伝えられました。あの時は、まさか我が子がと信じることができずショックを隠しきれませんでした。と同時に、今まで何かおかしいなと思っていたのが、やっぱりそうだったんだとすべてのパズルが揃った感じもありました。ショックな気持ちと、病名が付いたことや完治ではないものの治療法がいくつかあることへの安心感など、複雑な気持ちが入り混じった状態でした。しばらくは心の整理ができず泣いてばかりいました。学校に連れていくのも、周りの子どもたちを見るのも辛かったですし、しばらくふさぎこんでいました。    
それでも、子供たちが私のそばで毎日楽しそうにニコニコしている姿に勇気づけられ、度重なる検査や通院、次男の骨髄移植にむけてのドナー探しなどが始まり、泣いている場合ではなくなった記憶があります。

イギリスで受けたサポートで良かったことや、日本との違いを教えてください。

イギリスでは、点滴用に胸にポートを埋め込むことが一般的で、学校で点滴治療が受けられました。薬剤を自宅で保管することができ、投与日の朝私が準備したものを学校の先生に渡し、看護師さんが学校に来て投与をしてくれていました。学校で点滴治療が受けられたことで、私も病院へ連れていく手間が減り、自由な時間が出来ましたし、子供も学校を休む必要がなく、クラスメイトと一緒に授業を受けたり遊んだりすることができていました。
点滴用ポンプもとても小さかったので、リュックに入れて持ち運ぶことができ、そのまま授業に出たり、運動会に出たりすることもできました。ポートの埋め込み箇所が日本とは違い、脇の下辺りに埋め込まれていたので、リュックの紐があたらないのがとても良かったです。日本では胸の上辺りに埋め込まれることが多いと思うのですが、紐があたってしまい、ポートの入れ替えをされたご経験がある方を知っているので、日本でも脇の下になれば良いのにと思います。

                                           M.N.さんご提供

イギリスでは、インクルーシブ教育があたりまえで長男が学校で治療を受けられていたように、病気や障害のある子が小さい頃から側にいることで自然に助け合うことが日常になっていると感じました。    
自宅にいるとママ友が突然来て、「子供を見ていてあげるから、コーヒー飲んでおいで!」と言ってくれたり、入院中は近所のママが、洗濯物を取りに来てくれたり、あるときはママ友の一人が病院から帰宅する私たちを地元の駅で花束と息子たちのためにお菓子を両手に抱えて待っていてくれたこともありました。イギリスでの生活は障害が障害となることがなく、むしろすばらしい医療制度やサポートシステムに加え、人の優しさに助けられた4年間でした。          
それから、イギリスでは必要なすべての科(定期的に受けた方が良い診療科、例えば眼科、耳鼻科、循環器科、リハビリ、整形外科、脳外科、歯科、遺伝診療科など)を病院がすべてアレンジしてくれ、スケジュールが郵送されてきました。日本ではそのようなシステムがないので、おかしいなと思ったときには、いつからその症状が出てきたか分からない状況で、進行速度が把握できないのは問題であると思います。私は帰国後、何科を受診するべきかをある程度把握できていたので、主治医の先生と相談しながら日本でも自ら他科を予約するようにしています。母親である私たちは常に育児と介護の間で幼稚園や学校、療育施設、デイサービスなどのスケジュール管理に追われています。そのようなシステムが日本にもあればすこしでも負担が軽くなるのではと思います。

同じ病気のお子様をもつご家族へ何かメッセージをお願いします。

「なぜ、うちの子が…」そう思わずにはいられない日々。
隣の芝生が青く見えて、他人と比べては落ち込む。
そんな絶望の淵に立たされることもあるかもしれません。過去の私がそうでした。
ムコ多糖症Ⅱ型は、本当に残酷な病気です。
昨日までできていたことが、明日にはできなくなるかもしれないという不安。
その恐怖と毎日、闘っていることと思います。悲しくて涙が止まらない夜や、誰にも打ち明けられず苦しい思いを抱える日々、時には、息が詰まるような辛い思いをすることもあるでしょう。
それでも、子供たちの笑顔を見ると、病気のことを忘れることができる瞬間がありませんか。限られた時間の中で、一生懸命生きる子供たちの笑顔が、私に生きる力を与えてくれています。
息子たちのおかげで、

目の前の幸せ
今そこにある幸せ
今ここにいる幸せ
生きているという幸せ
生きるという幸せ

そして命の大切さと、当たり前の毎日が当たり前ではない奇跡であり、なんでもない日常が宝物であることに気づくことができました。
息子たちの笑顔を、ずっと守りたい。そして、同じように病と闘っているご家族と共に、この困難を乗り越えたいと心から思っています。

YOU ARE NOT ALONE
大丈夫、1人じゃない。

私はSNSで少しでも病のことを知ってもらい、早期発見に繋げられる方が増えて欲しいという思いで息子たちの情報を発信したり、同じように障害のあるお子さんを持つママさんたちが繋がれるオンラインサロンを運営しています。
孤独で不安を抱えている方、育児で悩んでいる方、みんなで助け合って、前向きな日々を生きていけたらと思っています。
ご興味のある方は、是非下記からご連絡いただければと思います。
みーま/障害のある人もない人も共に生きやすい社会を目指す(@miima_for_specialneedskids) • Instagram写真と動画

M.N.さん

2012年 6月 第1子 男児ご出産
2015年 4月 第2子 男児ご出産
2016年 1月 長男・次男共にムコ多糖症Ⅱ型と診断を受ける