脳室内投与の実際

国立成育医療研究センター 遺伝診療センター 遺伝診療科 

蘇 哲民 先生

ヒュンタラーゼの脳室内投与は小児科医が行います。今回のみんなの声は、「脳室内投与の実際」について国立成育医療研究センター遺伝診療科 蘇先生に伺いました(2022年6月取材)。

投与にかかる時間はどれくらいですか?

来院時には患児の体調をチェックし、問題がなければヒュンタラーゼ投与の準備をします。来院から投与の準備及び投薬までを、30分から長くても60分程度で終了して帰宅できるような体制で、治療を行っています。

図1

投与はどのように行うのですか?

ヒュンタラーゼの投与は、外来のベッドで行っています。介助者は保護者と看護師、投与は小児科医が行っています。多くの場合、母親がスマートフォンなどで動画を見せながら、患児が首を振らないように看護師がしっかりとサポートして投与します。

図2

投与の手順

  1. リザーバの位置を確認して、髪を短く切り周囲をアルコール綿で清拭します。
  2. 髪の毛をテープで固定して、針を刺す部位を消毒します。
  3. 翼状針(投与に用いる注射針)でリザーバに針を刺し、脳脊髄液を採取します。
  4. 脳脊髄液を採取後、注射器を付け替えて約1分かけてゆっくりとヒュンタラーゼを投与します。
  5. 抜針し、針を刺した部位を軽く滅菌ガーゼで圧迫して出血等のトラブルがないことを確認します。
  6. 保護シールを貼ります。

副作用の心配はありませんか?

ヒュンタラーゼを脳室内投与した後の副作用などについては小児科医が管理しています。
ヒュンタラーゼ投与によって、発熱や消化器症状などの副作用が見られることがあります。

発熱

帰宅後、夕方に38℃程度の発熱が見られることがあります。その場合、本人が元気であれば、翌日には熱が下がりますので経過を見ていただき、熱が続いているか、他の症状が見られれば、医師あるいは看護師にご連絡ください。

消化器症状

嘔吐はご家族が最も心配される症状で、投与直後に発現することはなく、「帰宅してから1~2回した」、「夕食が摂れなかった」というケースがほとんどです。しかし多くの場合、翌日には回復して普通に通学(園)でき、食事も摂れていることから、当日は食事を少なめにして、水分を十分に摂って様子を見てください。症状が続くようでしたら、医師あるいは看護師にご連絡ください。

日常生活で注意することは

学校での運動制限については、サッカーや相撲、ラグビーといった頭部へのコンタクトがあるスポーツは控えなければなりません。また、水泳については問題ありませんし、投与した当日の入浴や洗髪もかまいません。その他、日常生活には特に制限はありません。

図1~図2 蘇 哲民 先生 ご提供

蘇 哲民 先生

2011年3月 昭和大学 医学部卒業
2011年   自治医科大学附属さいたま医療センター
2013年   国立成育医療研究センター
2016年   国立成育医療研究センター 教育研修部
2018年   立成育医療研究センター 集中治療部
2021年   国立成育医療研究センター 高度先進検査室
2022年   国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 遺伝診療科
2022年   国⽴成育医療研究センター 遺伝診療センター 遺伝診療科, 現在に至る
(2022年10月現在)